太古の昔より、王国の歴史とは「称賛」と「栄光」の積み重ねであった。
民は偉大なる王の足跡を讃え、その言葉を羊皮紙に刻み、末代まで語り継ぐ。
今、この竹林の地に佇む緑のテント城においても、一人の王子が己の「圧倒的人気」に恐れ戦いていた。
溢れ出る威光が、王国を揺るがす事態になるとも知らずに――。

大変だ!
大変なことになってしまうぞ、執事!!
今すぐ王国の掲示板に『人気記事番付(人気記事ランキング)』を設置するのだ!

……はぁ。
急にどうされたのですか王子。
愛馬のブラッシングの手を止めてまで、そのような無茶振りを。

ふっふっふ、愛馬の毛並みも輝いているが、僕サマの頭脳も冴え渡っているのだよ。
人気記事番付を設置すれば、国民がどの物語を愛しているかが一目瞭然になる!
…しかし、だ。
僕サマは実に恐ろしい事態に気づいてしまったのだよ。

恐ろしい事態、ですか?

そうさ!
番付を置いた瞬間、上位すべての記事が『僕サマの華麗なる武勇伝』で独占されてしまう!
まさに『千客万来(せんきゃくばんらい)』ならぬ『千万無量(せんまんむりょう)』の爆発的人気!
そうなれば、城のポストに僕サマへのファンレターが山のように押し寄せ、この緑のテントが手紙の重みで潰れてしまうかもしれんのだ!!

(千万無量……?まあ言いたいことは分かりますが)
王子、それは単なる『捕らぬ狸の皮算用』でございます。
それに手紙の重みで潰れる前に、このテントは風で飛ばされます。

王子!
素晴らしいご懸念です!
それなら王子の隠し撮りブロマイド付き特別仕様の掲示板にいたしましょう!
全ランキングを王子の写真で埋め尽くします!

やめなさい。
……まったく、仕方ありませんね。
仕組み(ランキングプラグイン)自体は王国のカラクリ回路に新たな魔導具を組み込むだけですので、すぐにバリアフリー工事を終わらせましょう。

お話しは聞きましたよ!
番付の完成祝いに、特製スナックをご用意しました!
サクサクのパイ生地の中に、秘伝の緑の宝石をぎっしり詰めた『人気NO.1パイ』です!

ピッピッピッ!
……ぬおっ!?
耳裏の高性能グリンピースセンサーが激しく反応しているぞ!
シェフ、貴様また僕サマの番付上位独占を嫉んでグリンピースを仕込んだな!?

ちっ、相変わらず目ざといセンサーだ……

ハッハッハ!
お困りのようですな王子!
拙者が持ち込みましたこの『全自動・人気捏造の古文書』を使えば、王子の記事を無条件で一位に固定できますぞ!
たった金貨100枚で!

怪しい商人は下がっていなさい!
……よし、正当な自動集計のカラクリ設置が完了いたしました。
さあ王子、これで最新の『人気記事番付』が側面に表示されましたよ。

おお……ついに完成したんだね!
よし…僕サマのファンレターが届きすぎてパンクする前に、覚悟を決めて一位を確認しよう!

……む?

……おや?

一位……?
二位……?
三位……?
僕サマの物語は……?
僕サマの華麗な冒険譚はどこだ!?

……えー、圏外ですね。
どこをどうスクロールしても、王子の物語はランクインしておりません。

な、なにぃーッ!?
そんなバカな!
僕サマの圧倒的威光はどうした!?
ファンレターでテントが潰れる心配は!?

安心してください王子。
ポストはカラッポ、ファンレターどころかチラシ一枚届いておりません。
完璧な静けさです。

う、嘘だ……!
こんなの王国の時空が歪んでいるに違いない!
……ええい、ショックで急に強烈な眠気が襲ってきた!
僕サマは傷ついたから今日はもう寝る!
あとの集計のやり直しは任せたよ、執事!

……はぁ。
勝手に期待して勝手にショックを受けて寝るだなんて、本当に手がかかるお方だ。
まあ、ポストが潰れる心配がなくなっただけでもよしとしますか……。


