僕がこの世に生まれたのは、夕方の17時30分ごろだったらしい。
父の仕事が終わって帰宅できる時間ぐらい。

早くお父さんに会いたかったから、この時間を選んで生まれてきたのかな?
親孝行な息子さんだね。
なんて、言われたりもしたみたい。
生まれてすぐに孝行息子扱いされて幸せだよね。
生まれたときの体重は、わずか1,800グラム。
かなりの小さめだったけれど、ギリギリのところで保育器には入らずに済んだそうだ。
まさに「小さく産んで大きく育てる」を、地で行くようなスタートだった。
母方の家にとっては外孫だけど初孫。
そして、父方にとっては待ちに待った男の子、跡取りの誕生。
小さく生まれた僕は、両家からの溢れんばかりの喜びに包まれて、大事に大事に抱きしめられた。
…ただ、僕が生まれるまでの母の奮闘記として。
少しエピソードがある。
陣痛がはじまった母は、産婆さんからこう言われていたらしい。

気が遠くなるほど痛くなったら教えてね。
そしてもうひとつ、「陣痛がピークになるとサッシが二重に見える」という噂を真に受けていた母は

まだ気が遠くなってないし、サッシも二重に見えない!
と必死で痛みを耐え続けた。
歯を食いしばりすぎて、奥歯が欠けてしまうほど我慢した。
いよいよ耐えかねて伝えると、産婆さんに

こんなに我慢しちゃダメじゃない!
と本気で怒られたそうだ。
実はもう、今にも生まれる寸前だったらしい。
こういう我慢強さ(というか、真面目すぎて我慢の基準が分からなくなる感じ)は、悲しいかな、僕にもしっかり遺伝している。
僕も歯医者さんで「痛かったら手を上げてくださいね」と言われると、脳内会議が始まるのだ。

うっ、痛い!
でも、手を上げるほど痛いか?
我慢できるか?
悩んでいると、次の激痛がやってくる。

あ、さっきより今の方が痛い!
ってことは、さっきのは手を上げなくて正解だったな。
…で、今回のこの痛みは手を上げるべきか??
結局、上げられないまま終わる。
お母さん、血は争えないね。
五体満足で産んでもらって、あんなに喜ばれて、愛情いっぱいに育ててもらったのに…
今の自分を見ると、「情けないなあ」と申し訳なくなることがある。
でもね。
僕はまだ、諦めてはいないから。
小さく生まれたあの日からはじまった僕のストーリーを、ここから少しずつ、できればおもしろく振り返っていこうと思う。


