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一冷即発の残暑!冷凍庫のないテント城とかき氷の悲劇

わがままだもの
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直射日光で室温40度を超える、まだ小さくてかわいい3人用テント。
太陽は容赦なく地上を焼き尽くし、草木さえもその首を垂れる無慈悲な酷暑の刻(とき)。

国家予算ゼロ、いまだ広大な敷地の隅にポツンと佇む「小さくてかわいい3人用テント」は、蒸し風呂のごとき灼熱の檻と化していた。

しかし、どれほど過酷な運命に晒されようとも、我らが王子の高潔なる精神が潰えることはない。
例えその身が、暑さでドロドロに溶けかけていようとも――。

王子
王子

ふ、ふはは…見るんだ執事…僕サマの体が、まるで温められたバターのように液体化しつつあるよ…これぞまさに『一冷即発』の危機だ…!

執事
執事

それを言うなら『一触即発』でございます、王子。
そして液体化しているのではなく、単に汗をかきすぎてデロデロになっているだけでございます。
頼むから白馬のブラッシング中に倒れ込まないでくださいね。

テントの影で、愛する白馬のたてがみに愛おしそうにブラッシングを施しながら、王子は今にも崩れ落ちそうになっていた。

メイド
メイド

尊い!
汗だくになりながらも愛馬の手入れを怠らない王子…これ絶対バズる!

物陰からピンクの髪を揺らし、メイドがスマホのシャッター音を消して激写する。
その時、シャラシャラと涼しげだが酷く胡散臭い鈴の音が響き渡った。

商人
商人

ヘッヘッヘ……お暑い中でござるな、王子様!

和装に身を包んだ怪しい商人・ワガママ商人が、そろばんをパチパチと叩きながら現れた。
その手に握られているのは、一見すると何の変哲もない「袋かき氷」である。

王子
王子

ぬ……?
何だその袋は、商人!

商人
商人

これぞ東洋の秘宝!
『極寒・四位一体の氷袋』でござる!
手に持てば一瞬で涼風が吹き荒れ、火照った体に押し当てれば至高の冷却!
枕に敷けば極上の夢心地!
そしてなんと……食べればお腹の中から身体を凍らせるという、伝説の神薬でござるよ!

ただの袋かき氷を怒涛の大げさトークで売り込む商人に、執事は冷ややかな視線を送る。

執事
執事

ただのイチゴ味の袋かき氷でしょう。
騙されてはいけませんよ、王子。

だが、暑さで思考が麻痺していた王子は、商人の言葉に目を輝かせた。

王子
王子

な、なにそれ……!?
かしてかして!

王子はひんやりとした袋かき氷を頬に押し当て、さらにそのまま口へと流し込んだ。

王子
王子

―――――っ!!??
冷たい……!
そして、あ、甘くておいしい……っ!!
体の底から奇跡の涼しさが湧き上がってくるよ!!
これこそ東洋の神秘!!

執事
執事

王子!
落ち着いてください、ただの袋かき氷です!

王子
王子

だめだ執事!
これはこの国に必要な文明の利器だ!
商人、買い占めるよ!
国庫(※王子のポケットマネー)からすべて支払っちゃう!

商人
商人

毎度ありでござる~!

ホクホク顔で立ち去る商人。
こうして王子は大量の袋かき氷を手に入れ、大満足で床についたのだった。

翌朝。

太陽が再び昇り、テント内が灼熱の蒸気で満たされる頃。
王子はドヤ顔で「極寒の宝」を手に取った。

王子
王子

フフフ、見てよ執事。
今日もこの神薬で涼をと……ん?

王子の手にある袋は、ぶよぶよと柔らかかった。
ストローを差し込み、一口飲んだ王子は固まった。

王子
王子

……ぬるくて……ただただ甘い赤色の水になっている……。

執事
執事

当たり前でしょう。
この小さなテントのどこに『冷凍庫』があるとお思いですか。

呆れ果てる執事の横で、シェフが

シェフ
シェフ

冷えたシウマイでございます。

と差し出すが、王子の耳裏から「ピッピッピッ!」と鋭い警戒音が鳴り響いた。

王子
王子

シェフ……!
このシウマイに練り込まれたグリンピースの存在を僕サマのセンサーが感知した!
けど……崎陽軒のシウマイに免じて今回は許す!
それより執事、氷水になったこれを凍らせる魔法の箱(冷凍庫)を売っている商人を呼んできて!!

執事
執事

だから予算がないと言っているでしょうが!!

ぬるいイチゴ水をジュースのようにすすりながら、王子は今日も今日とて、灼熱のテントの下でワガママに復興を夢見るのであった。

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