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山芋をすって焼くなどした日

なう
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山芋大好きなんだよ。
(パンダ談)

あのね、聞いて。
お料理の話なんだけど。

ここに、1本の山芋がある。
ポストに、重たい「愛」が届いたあの日の残り。
友人からの山芋だ。

これまでにも真っ赤な宝石のようなさくらんぼや、実直な顔をしたリンゴが届いたことがある。
そのたびに、僕は自分の胸の奥にある「ありがとう」という粗末な袋が、少しずつ重くなるのを感じる。

「なにか返せたらいいけどな」
そんな言葉が喉元まで出かかって、山芋の泥と一緒に排水溝へ流れていった。

僕は山芋が好きだ。
漬物にしてもいいけれど、やはりあの白く暴力的なまでの「トロトロ」を味わいたい。

けれど、知っているだろうか。
山芋をおろし金で擦るという行為は、現代における「苦行」のひとつだ。
ヌルヌルと逃げる実体、指先を掠める恐怖、そして透析生活で少しだけ頼りなくなった僕の右腕。
ここで僕は、自分を甘やかすことに決めた。

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文明という名の、冷たい優しさ

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「機嫌よく作りたい」 それは、どんな高級な白だしよりも僕を救う調味料だ。
僕は、フードプロセッサーという文明の利器を召喚する。
購入時に「いつか使うかも」と買い揃えた、あの「すりおろし装備」の出番だ。

まずは皮を剥く。
思ったよりも剥きにくい。
これが一番簡単なはずなんだけど。
ヌルヌルすべって剥きにくい。
僕のならもっと簡単に…なんでもない。

ピーラーを走らせるたびに、山芋はあどけないほど真っ白な肌を露呈させる。

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包丁は、出し入れするたびに勝手に研がれるイカしたやつだ。
研ぐのが苦手な僕のために、僕の代わりに鋭利でいてくれる。
便利だ。
便利すぎて、時々自分が「何もしない王様」になったような錯覚に陥る。

でも、それでいい。
僕が機嫌を損ねて、ため息を混ぜ込んだ料理なんて、誰も喜ばないのだから。

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200グラムの、逃げ場のない白

「ギュイーン」という無機質な音が、キッチンに響く。

山芋は一瞬で下の階へと消え、完璧なトロトロへと姿を変えた。

これだけあれば、なんだってできる気がする。

世界のすべてを、この白い粘液で塗りつぶせるような全能感。

お玉一杯、約100グラム。
二杯分をボウルに入れ、卵を落とす。

味付けは白だし。
キャップ三杯。

「適当でいい」という言葉は、自分への信頼だ。
濃いものを薄めるのは難しいけれど、薄いものを濃くするのはゲームのリセットボタンと同じでいくらでも後からやり直せる。
薄くしておけば失敗は失敗で終わらない。
最後においしくなればそれは成功なのだから。

焼いていく。

油は好きに引く。

流し込んで焼いていく。

けれど、僕は気づく。
ひっくり返せない。

あまりのトロトロに、フライ返しの上で形が保てないのだ。

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失敗と、焦げ目と、共犯者

僕は迷わず、スクランブルエッグ方式に切り替えた。
本当は粉を入れるつもりだったのに、すっかり忘れていた。

でも、いい。
生で食べられないものは入っていない。

少し焦げた。
けれどその焦げた匂いもまた、僕が「ここで生きて、料理をした」という証拠だ。
味はおいしかったし、おどろくほどふわふわトロトロだった。

二回目は、学習して小麦粉を混ぜた。
カレースプーンに大盛り3杯。

カレースプーン大盛り1杯の小麦粉はだいたい25g。
今回は75g、だいたいね。

粉の力は偉大だ。
さっきまでの支離滅裂なトロトロが、ちゃんとした「形」になって僕の前に現れる。
返しやすい。
裏側も、いい色に焼けた。

僕は1回目と同じ、少し汚れた皿にそれを盛る。
洗い物が面倒だから、どうせ同じようなものを盛るだけだし。
自分で食べるわけだし。

少し粉が多かったかな。
次回はスプーン2杯でいいかも。
そういう発見もまた楽しみなのだ。

おぼえてるかはしらんけど。

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祈りのような、冷凍保存

余った山芋は、袋に入れて冷凍庫へ。
次に作るときは、粉を2杯にしてみるだけではなくて、マヨネーズを混ぜてもっと背徳的な味にしようか。
そうやって「次」のことを考えられることが、僕にとっての健康であり、友人への一番の返礼なのかもしれない。

僕が機嫌よく、この白い塊と格闘しているとき。
遠くの空の下であの友人もまた、機嫌よく笑っていてくれればいい。
この山芋の粘り気は僕と君を繋ぐ、切っても切れない腐れ縁のようなものであればいい。

さて、マヨネーズはどこだったかな。
今日も僕は、マヌケで静かなキッチンで、少し焦げた愛を食べた。

聞いてくれてありがとう。

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