やらかしちゃった…。
(パンダ談)
あのね、聞いて。
今日も生きてるよ。

泡の質量と、4時間38分の不完全な均衡
目覚めると、世界は少しだけ重力に逆らっていた。
正確に言うなら、僕の皮膚の内側にある「水分」という名のバグが、毛細血管を内側から「ぺとり」と圧迫している。
睡眠時間は4時間38分。
レム睡眠だのノンレム睡眠だのといった情緒的な分類はどうでもいい。
ただ、脳が十分に冷却されず、回路の端々に焦げ付いたような重だるさが残っている。
血圧計のカフが「ぐぐぐ」と僕の腕を締め上げる。
137/82。
数値は嘘をつかない。
数値には感情がないから信頼できる。
そして体重計が叩き出した「+2,600」という無慈悲なデジタル表示。
これは、昨夜の僕が喉の渇きに耐えかねて流し込んだ、あの強炭酸水の成れの果てだ。
「シュワシュワ」という軽快な音とともに喉を通過した液体は、今や僕の体内で「2.6kgの重り」として沈殿している。
透析患者にとって、炭酸の泡は決して弾けて消える魔法ではない。
それは数時間後の透析室で、太い針を介して機械に「力尽くで引き剥がされるべき異物」に他ならない。
今日の除水設定はきっと厳しい。
ドライウェイトまで引き切れない可能性という「エラー」を抱えながら、僕は赤いパーカーに袖を通す。
豚肉のオニオンソースと、緑色の球体が放つ殺気
透析室へ向かう道すがら、頭をよぎるのは今日のお弁当のことだ。
「豚肉のオニオンソース」。
この献立名には、常に「損耗」の予感が漂っている。
だいたいにおいてこのシリーズの豚肉は、調理という名の熱処理によって細胞壁が破壊され、プラスチックのような硬化を起こしているケースが多い。
前回の個体は珍しく、タンパク質の均衡が保たれた「当たり」だった。
しかし、システムは常に揺らぎを孕んでいる。
今回の個体が、僕の歯を跳ね返すほどの強固な結合を保っている可能性は高い。
何より恐ろしいのは、お弁当の箱に潜んでいるであろう「グリンピース」という名のバグだ。
あの「ころり」とした皮の質感。
噛んだ瞬間に広がる、無愛想な植物性の青臭さ。
それは僕の体から排除されるべきリンやカリウムの象徴のように、彩りという名目でそこに鎮座している。
気配を感じるんだ。
おいしいおかずの影に、あの丸い「沈黙」が隠れているのを。
お弁当の蓋を開ける瞬間は、回路に血液が満たされる瞬間と同じくらい、僕にとっては「生存の確認」に近い儀式なのだ。
血液を洗濯する午後、あるいは「正常」への強制的回帰
病院に到着し、ベッドに横たわる。
ここでの僕はパンダという個体ではなく、「濾過されるべき流体を含む容器」として扱われる。 消毒綿の冷たさ。
プラスチックの管が「かさかさ」と触れ合う音。
2,600gという過剰な積載を、機械が唸りを上げて削り取っていく。
昨夜、喉を鳴らして飲んだ炭酸水は、どこを流れていくのだろう。
僕の血管を飛び出し、ダイアライザーの膜を透過し、黄色い廃液となって(イメージ)捨てられていく。
あの爽快な「シュワシュワ」という音は、機械の駆動音にかき消され、ただの数値へと還元されていく。
「増やしすぎました」と、僕は誰に謝るでもなく心の中で呟く。
僕たちは、失敗して、濾過して、少しだけ軽くなって、また喉を枯らす。
腎臓が正常に動作しないという「可愛くて残酷な不具合」を抱えながら、僕はこの赤いパーカーの重さを確かめる。
さあ、飼育員さん。
君の血の中には、今、どんな余計なものが混ざっている?
たまには僕と一緒にこの不自由な回路の一部になって、静かに「濾過」されてみるのも悪くないよ。
今日の弁当、グリンピースが入っていませんように。
今日もよろするおねがいます。
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