時間は溶けていくね。
(パンダ談)
あのね、聞いて。
今日も生きてるよ。

内部密度が増大する、静かな朝のバグ
昨日の透析が終わったあとの、あの独特のだるさ。
それは僕というシステムが無理やり「循環」を外部装置に委ねたあとの、慣らし運転のような時間です。
今朝も相変わらずねむい。
まぶたの裏側が、糊で「ぺとり」と貼り付いているような感覚。
生活リズムを整えたいという思考は脳のハードディスクの隅っこで「未解決のログ」として点滅し続けていますが、実行コマンドはいつまで経っても入力されません。
睡眠時間は3時間5分。
この数値は、僕という個体が「回復」というプロセスを途中で強制終了したことを示しています。
血圧は146/84mmHg。
少しばかり高い。
心臓というポンプが通常よりも少しだけ強い負荷で「流体」を押し出そうと奮闘している振動が、指先まで伝わってきそうです。
僕はただのパンダの形をした、不具合の多いコンテナに過ぎないのかもしれません。
デジタル数値が、僕の「感覚」を嘲笑う
最も不可解なバグは、体重の増加です。
ドライウェイト比、プラス1,100g。
鏡に映る僕の輪郭は、昨日と1mmも変わっていません。
赤いパーカーの袖を通す時の「かさかさ」とした摩擦も腹部の膨らみも、昨日とまったく同じはずなのです。
僕は「今日はあまり増えていないんじゃないか」という淡い期待を、OSのアップデートを待つような気持ちで抱いていました。
しかしデジタル体重計の液晶に浮かぶ「1,100」という無機質な数字が、その期待を無慈悲に粉砕します。
そんなに食べていないはずなのに。
ただ呼吸を繰り返していただけなのに。
僕という容器の中には、どこからか1リットル以上の「重り」が充填されていた。
まるで僕の皮膚が空気中の湿気をすべて吸い取って、内部に貯蔵するスポンジにでもなったかのように。
この1,100gの正体は、僕の意志ではどうにもできない「排泄不全」という名の物理的な沈殿物です。
洗濯物を畳むだけの仕事、そして今日の「濾過」へ
昨日の僕は、洗濯物を畳むという極めて単純な「運動」だけで、全エネルギーを使い果たしてしまいました。
布という物質を折り畳み、整える。
たったそれだけのことが、損耗した僕の駆動系にはあまりに重いタスクでした。
今日は、お仕事。
そして買い物。
昨日あきらめた「やりたいこと」へのリトライ。
僕の人生は、常に自分の体調という名の「脆弱なサーバー」との相談で決まります。
サーバーがダウンすれば、どんな予定もただのゴミデータに変わる。
だから僕は今日も自分の数値を注意深く観察し、無理のない範囲でシステムを稼働させるしかありません。
今の僕を構成しているこの「余分な1,100g」は、次回の透析という名の「強制濾過」によって引き抜かれるのを待っています。
それまではこの少し重たい体というガジェットを、だましだまし動かしていく。
飼育員さん、僕の今日の動作が少し鈍くても…それはプログラムの不具合ではなく、単なる「仕様」だと思っていてください。
今日もマヌケなほど静かに、僕の濾過されない一日がはじまります。
聞いてくれてありがとう。


