やっぱりネットが最高だ。
(パンダ談)
あのね、聞いて。
今日も人生にログインできたよ。

粘膜に封じ込めた「バグ」の移送
朝、目覚めると同時にシステムがエラーを吐き出す。
「へくしゅん」という、可愛げのない破裂音が静かな部屋に数回、無機質に響く。
季節に関わらず発生するこの現象は、もはや僕の起床シークエンスの一部だ。
鼻の奥で増殖するイライラは、形のない不快感だ。
それを解決するのは情緒的な深呼吸ではなく、ティッシュという名の使い捨てデバイスによる物理的な清掃である。
鼻をかむ。
その瞬間、鼻腔を占拠していた「バグ」が紙の中に移送され、僕の機嫌は平熱へと回帰する。
損耗した体力は、わずか数パーセントだろう。
だが、この「出すことで整う」という感覚こそが僕の人生の縮図そのものだ。
昨日は、お値段以上を謳う店や、巨大なホームセンターを徘徊した。
しかし、そこに僕の求める「解」はなかった。
田舎の物質的充足感は、時として僕の細かなこだわりを透過してしまう。
結局、ネットの光ファイバーの向こう側に僕の回路にぴったりはまる部品を見つけた。
配られた物価高騰対策の商品券。
この「1枚の紙切れ」を、どの栄養素や利便性に変換すべきか。
血圧計の数値は「152/92」を示し、赤いフォントで僕に警告を送っている。
「正常に動作する内臓」という贅沢品を、僕たちはいつも数値で計量している。
除水とドライ、均衡するパンダの質量
今日の増えは「2,300g」。
これは僕が摂取した、液体と固形物の総量から排泄しきれなかった「バグ」の重さだ。
身体の痒みが引いたのは、おそらくドライウェイト(設定体重)の設定が僕の肉体の現状と、ようやく不気味な一致を見せはじめたからだろう。
僕の皮膚は、体内の水分量という正確なパラメーターに支配されている。
5時間25分。
僕が意識をシャットダウンしていた時間だ。
「もっと早く寝るべきだ」という思考は、OSのアップデートを先延ばしにする通知のようにいつも画面の端に追いやられている。
不規則な睡眠は、僕という機械のパーツを少しずつ確実に磨耗させていく。
さて、今週最後の「濾過」の時間がやってくる。
透析室のベッドは、僕の血液を外部の装置へと接続し、汚れを削ぎ落とし、再び僕の中へ戻すためのドックだ。
数時間の強制的な「静止」の対価として、僕は月曜日までの命を繋ぐ。
今日の楽しみは、お弁当のデミグラスハンバーグだ。
茶色いソースにまみれた肉の塊を想像する。
それは、僕の血肉となり、やがて次回の透析で「数値」となって排出される。
透析終わりの買い食いを我慢する。
それは、僕が僕というシステムを崩壊させないための、静かな抵抗だ。
マヌケな循環の中で
買い食いはいけない。
透析が終わった後の、あの空っぽになった身体が欲する「余計な塩分」や「過剰な水分」は、今の僕には猛毒だ。
増えすぎた分を削り、また新しい1週間をはじめる。
僕は、自分の不具合を抱えた身体を丁寧に、そして冷徹に管理し続ける。
それはお涙頂戴の物語ではなく、ただの「メンテナンス記録」だ。
飼育員さん、僕がデミグラスの香りに負けてコンビニに寄らないように遠くから見張っていてください。
さて、そろそろ「その時」へ向かう準備をしよう。
赤いパーカーを整えて、静かに座る。
聞いてくれてありがとう。


