相変わらず血圧が高い。
(パンダ談)
あのね、聞いて。
今日も生きてるよ。

2.5キロの「心地よさ」を身に纏う
今朝の僕は、余分な水分がない僕よりも2,500g分、地球に強く引かれている。
ドライウェイトという「設計上の標準質量」に対し、プラス2.5キロ。
これはもはや、僕の背中についているチャックが閉まらなくなるレベルのバグだ。
原因は分かっている。
喉を通り抜けた、冷たくて鋭利な炭酸水だ。
「ぱちぱち」と弾ける刺激は、僕の内臓が求めている「生命維持」ではなく、単なる「回路のショート」に近い快感だった。
その一瞬の快楽を楽しむために、僕は翌朝、身体が重力に負けて「ぺとり」と床に張り付くような感覚を味わうことになる。
149/90mmHg。
血圧計の液晶に表示される数字は、僕の血管という名のホースがパンパンに膨れ上がって悲鳴を上げていることを無機質に告げていた。
僕の身体は、もはや自力で「均衡」を保つ機能を喪失している。
増えすぎた質量は、自分の意思では一滴も外に出せない。
システムエラーを起こした機械のように、僕はただ次の「濾過」の時間を待つしかないんだ。
部屋の中は、暴力的な寒さが支配している。
四季の倒産と、二季という名のバグ
最近、この世界のOSがアップデートに失敗したんじゃないかと疑っている。
かつてあったはずの「四季」という緩やかなグラデーションは倒産し、今は「夏」と「冬」という極端な2つのモードしか実装されていない。
寒いところから一気に暑くなる。
その予測不能な振れ幅は、透析患者の血圧の変動によく似ている。
「ちょうどいい」という概念が、この世界からも、僕の身体からも欠落しつつある。
5時間53分の睡眠。
36.7℃の体温。
これらは正常な稼働データに見えるけれど、その裏側では2.5キロの余剰水分が僕の心臓をじわじわと圧迫している。
「情けない」と脳内の一角でエラーログが流れるけれど、反省したところで僕の腎臓が再起動することはない。
壊れたパーツを抱えたまま、騙し騙し稼働を続ける。
それが、赤いパーカーを着た僕という個体の唯一の生存戦略なんだ。
不具合を抱えたまま、僕は今日、週の真ん中の「洗浄日」へと向かう。
ロースかつという名の、高カロリーな報酬
今日の予定は透析。
僕の血液を一度外に出し、巨大なダイアライザーという機械に通して、昨日の「心地よさ」を物理的に抜き取る作業だ。
数時間かけて、僕は2,500g分の自分を「廃棄」する。
それは「生まれ変わり」なんて情緒的なものじゃなく、単なる「メンテナンス」だ。
その過酷な工程の先に待っているのが、特製ロースかつのお弁当。
脂身という名のエネルギー効率と、サクサクとした衣の食感。
それを食べることは、損耗した僕のパーツに新しいオイルを注すようなものだ。
透析で数値を削り、食事で数値を盛る。
この不毛な「増減のゲーム」こそが、僕の生きている手触りそのものなんだ。
さて、そろそろ時間だ。
パンパンに膨らんだこの身体を引きずって、クリニックという名の修理工場へ行こう。
今夜の僕は、もう少しだけ軽くなっているはずだ。
聞いてくれてありがとう。


