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赤ちゃんきゅうりさんと、内緒の「お砂糖風呂」

なう
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おいしいきゅうりだった。
(パンダ談)

あのね、聞いて。
とってもきゅんきゅんして、お腹がすくお料理のお話があるます。

先日、きゅうりをいただいたんです。
まだこの世界に生まれて間もない、ちいちゃな、ちいちゃな赤ちゃんきゅうりたち。
「売り物にはなれないんだ」って言われて僕のところへきたけれど、規格外の命ってなんだか守ってあげたくなっちゃうます。

でもね、この子たちすっごく「とげとげ」してるんです。
さわるとチクッ、いたい、いたい。

「ボクにさわらないで!」って、ちいさな反抗期みたいに武装してるの。
新鮮すぎて、指先に刺さる若さゆえの攻撃性が、とっても愛おしくて心がぴょんぴょんするます。
見た目はちょっと不揃いだけど、切ってしまえばみんな素直な緑色の宝石になるます。

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よし、この子たちをとろけるような「お砂糖風呂」に入れてあげようと思い立ちました。

今回、きゅうりさんたちを優しく包むのは、山口笑社さんで紹介されていた「サガビネガー(右近酢)」さんのすし酢。
静置発酵っていう、時間をかけてゆっくりじっくり、逃げられないように熟成させたお酢なんです。
刺激が少なくて、とってもまろやか。
まるで、温かい湯船のお湯に沈んでいくような、抗えない幸福感に満ちた液体です。

まずはまな板の上で上から手でギュッとおさえて、きゅうりさんたちのプライドを折ってあげるます。
メキメキッ、パキッ。
「ひゃうん」って鳴き声が聞こえた気がして、僕はあせるます。
一口サイズに切り分けたら、ビニール袋という名の、密閉されたふかふかの個室へご招待。

そこにサガビネガーのすし酢を注ぐます。
たしかに、鼻にツンときません。
とがった殺意は一切なくて、すべてを許してくれるような包容力を感じるます。
お肌にじわじわと、化粧水が染み込んでいく感覚。

そこにお砂糖もたっぷり加えるます。
分量は僕の気まぐれ。
僕は世界中を甘やかしてダメにしたいから、味付けも過保護なまでに甘くするのが好きだぱん。

袋の空気をぬきぬきして、真空状態にして漬け込むます。
こうすると、少ない液体でもきゅうりさんの全身を、隙間なく「すし酢の愛」で満たすことができるんです。
空気がなくなって、きゅうりさんが静かになっていくのを見守るの、おなかすくます。

冷蔵庫でひんやりと一晩過ごしてもらうます。

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そして、完成。
…めちゃめちゃ、おいしかったです。
食感はポリポリ。
昨日まであんなにトゲトゲして反抗していた赤ちゃんたちが、今は僕の歯茎に心地よく媚びを売って、静かに胃袋へと消えていくます。

これを読んでいる君も、今夜あたり誰かを甘いお砂糖風呂に沈めて自分好みの色に染め上げたいって思ってるでしょう?
僕たちは、そうやってお互いを漬け込まないと安心できない共犯者なんだぱん。

美味しいねって笑いながら、自分の指に刺さった小さな棘の傷跡をそっとなめる僕。

ちなみに、お酢は放っておくと「酢酸菌」という子たちが液体の表面に分厚いコンニャクみたいな膜を作っちゃうんだぱん。
せっかく綺麗に澄んでいた液体に、一生懸命に自分の居場所を主張しすぎて真っ白なカーテンで外の世界を遮断しちゃう、ちょっぴり引きこもりな性質があるんだぱん。

蛇口から落ちる最後の一滴が、シンクに吸い込まれて消えた。

しらんけど。


「甘くしてあげる」という言葉の裏側には、いつだって骨まで溶かすような支配欲が隠れているます。
ビニール袋の中で空気を抜かれたきゅうりさんが、僕には君に見えたんだ。
飼育員さんだけに、内緒の話があるます。


「赤ちゃん」なんて呼びながら僕がやっていたのは結局、自分より弱い存在を自分の都合のいい味に変えて、咀嚼してなかったことにする作業でした。
それを「美味しい」「可愛い」という言葉でデコレーションしないと、僕は自分の残酷さに耐えられないのでしょうか。

僕は、パンダという「愛される記号」を演じることで、心の奥底にある真っ黒な虚無を隠しています。
本当は、何を見ても「美味しそう」か「利用できそう」か、あるいは「自分を傷つけないか」しか考えていない、最低な人間なんです。
そんな僕がこうしてブログを書いて、誰かに優しく語りかけている。
その矛盾が時々、静置発酵させたお酢みたいに僕の心をじわじわと蝕んでいくます。

でも、飼育員さん。
あなただけは僕のこの「甘い猛毒」を分かった上で、隣にいてくれるんでしょう?
僕がどれだけきゅうりを潰しても、どれだけ自分勝手な理屈を並べても、あなたが「ポリポリいい音だね」って言ってくれるだけで僕は救われるんです。
僕は、あなたに漬け込まれたい。
その愛という名のビニール袋の中で、空気を抜かれて、一生そのまま保存されたらどうなるでしょう。
身勝手でごめんね、でも離れないで。

しってほしいけど。

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