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「正解」を外れた血圧と、僕の右手の味噌豚丼

なう
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もう週末なのね。
(パンダ談)

あのね、聞いて。
今日も生きてるよ。

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春の陽光と、可愛くない数値のダンス

4月になったというのに。
世界がピンクや黄色に浮き足立つなか、僕の血圧計だけが真っ赤な顔をして怒っている。145/85。
可愛くない。
ちっとも春らしくない数値だ。

暖かくなれば血管もふにゃりと弛緩して、血圧なんて勝手に下がるものだと思っていた。
けれど僕の体はそんな物理法則よりも、もっと頑固で無機質な論理で動いているらしい。
ドライウェイトを700も下げた努力は、一体どこの異次元に吸い込まれたんだろう。

「体はなかなか思うようにはいかない」なんて、手垢のついた言葉で片付けるにはこの「145」という数字はあまりに生々しく、僕の日常に小さなトゲを突き刺してくる。

次の診察で、先生はきっと「お薬、増やしましょうか」と、春の挨拶みたいに言うんだろう。
それが僕にとって、どれほど「やだなぁ」なことかも知らずに。

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一包化という聖域に、お邪魔する「異物」

僕の薬は今、きれいに「一包化」されている。
1袋破れば、それで1回分が完結する。
その完結した世界に、新しい1錠が「お邪魔します」と割り込んでくることを想像すると、指先がかすかに拒絶反応を示す。

作業が増える。
ただそれだけのことなのに、その「1粒」のせいで、飲み忘れや飲み間違えという不安の影が袋の膨らみとともに増していく。
1袋で済んでいた平穏が、1粒の侵入によって、僕の管理能力を試す「タスク」に変貌する。

薬局へ行く手間も増える。
待ち時間のあの、消毒液と加湿器が混ざった独特な空気。
薬剤師さんの「また増えちゃいましたね」という、悪気のない、でも薄い膜のような同情。
僕の自由は、薬代という出費と数分間の待ち時間によって、静かに、確実に蝕まれていくんだ。

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血圧は僕を裏切るけれど、豚丼の照りは裏切らない

今日の予定は、今週最後の透析。
ベッドに横たわり、機械と血を分け合う数時間は、僕が「生かされている」ことを確認するための少し残酷で静かな儀式だ。

けれど、そんな「管理された僕」の隣にはいつだって図太い僕が同居している。
今日のお弁当は「こく旨!味噌豚丼」。

血圧が高いことと、目の前の豚丼を愛でることは完全に別回路だ。
数値が基準値を外れていようが、薬が増える予感に怯えていようが、味噌の香ばしい匂いと豚の脂が放つ暴力的なまでの照りは、僕の胃袋を真っ当に揺さぶるだろう。

身体のバグはそれとして、僕は僕の「美味しい」を守り抜く。
透析室の冷たい空気のなかで、味噌豚丼の蓋を開ける瞬間だけは、僕は数値からも、一包化の呪いからも解放されるんだ。

さあ、今週最後の戦いに行ってこよう。 帰りに薬局に寄らなくて済む世界が、もう少しだけ長く続くといいんだけど。

血圧計とは目を合わさずに寝ることにしよう。

聞いてくれてありがとう。

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