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証拠品になった空の皿、リンの囁きに震える

なう
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検索してびっくり。
(パンダ談)

あのね、聞いて。
お料理の話なんだけど。

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アロゼアロゼ

温まった油の海で泳ぐレバー。
何度も何度も油をかけて、色が変わっていく。
じんわりと火が通っていく。

あぁ、アロゼしてるんだ。
僕。

裏面はカリッと焼けた。
表も本格的に火を通す。

裏もアロゼ。

そしてここで草投入。

草の香りを纏わせていく。
アロゼ。

75℃で1分以上。
これで保健所からも文句は言われないであろうレバーステーキが完成した。

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幸福の絶頂、そして訪れる「物証」への恐怖

出来上がったレバーステーキは、恐ろしいほどに完璧だった。
ナイフを入れると、75℃の洗礼を受けた断面が、しっとりと僕を誘う。
1口噛めば、濃厚な鉄分とマーガリンのコクが脳を直接殴りつけてくる。
時折あたる「筋」すらも、自分が獲物を仕留めたという実感に変わり、愛おしくさえあった。

「アロゼしてよかった」 心からそう思った。
有名シェフの気分で油を回しかけたあの時間は、僕に透析患者であることを一瞬だけ忘れさせてくれた。

けれど、最後の一切れを飲み込み、空になったお皿を見つめた瞬間。
ふと、背筋を氷の指でなぞられたような感覚に襲われた。
「……そういえば、レバーって」
スマホで検索した文字が、僕の網膜を刺す。
そこには、リンという名の絶望的な数値が並んでいた。

さっきまで愛おしかった空の皿が、急に自分を告発する冷酷な「証拠品」に見えてきた。

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母のミルクと、僕を許さない数値

「温まるよ」 そんな声とともに、母がホットミルクを差し出してきた。
湯気を立てるその白さは、僕の胃袋に居座るドロリとした「赤」とは対照的に、あまりにも無垢で眩しすぎた。

「ごめん、飲みたい」
喉まで出かかったその言葉を、僕は無理やり飲み込む。
飲みたい。
その温もりに包まれたい。
けれど、今の僕の体には、この一杯の白さを迎え入れる余裕なんてどこにもないのだ。

体重、リン、カリウム。
僕を縛り付けるいくつもの数字たちが、僕の耳元で「お前はもう、十分に贅沢をしただろう」と囁いている。
母の優しさを受け取ることさえ、今の僕には許されない代償だった。

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共犯者としての夜

僕は優しさだけを丁寧に受け取って、中身の詰まったマグカップを静かに押し返した。
僕らはいつだって、何かを食べるたびに、自分の命と取引をしている。
あのアロゼの芳醇な香りは、きっと月曜日の血液検査で、冷たい数字となって僕に返ってくるだろう。

それでも僕は、あのローズマリーの香りを後悔できないでいる。

また月曜日、透析室の天井を眺める時間がやってくる。
血液は、なにを語るのだろう。

聞いてくれてありがとう。

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