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1,000gの余剰を抱えて、パンダは布団を脱皮する

なう
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朝はまだ寒いね。
(パンダ談)

あのね、聞いて。
今日も生きてるよ。

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薄い氷の境界線と、1,000gの物質的責任

アラームが鳴る10分前、僕というシステムは予定外の再起動を完了した。
寝る前に感じた不快な蒸し暑さはどこへやら。
朝の空気は、まるで薄い氷のように僕の周りに張り付いている。
布団のぬくもりと外界の肌寒さ。
その境界線は、わずか数センチの厚みしかない脆いものだった。
僕は暑さに耐えかねて、寝る前に右足を布団の外へと放り出していたらしい。
僕の末端組織は、夜通し外界の冷気に晒され、しんしんと「冷却」されていたというわけだ。

飼育員さん、知っているだろうか。
僕のような透析患者にとって体温調節や水分の均衡は、個人の感情ではなく「数値の保守」の問題だ。
布団を蹴飛ばすという何気ない動作ひとつとってもそれは体温の損耗であり、エネルギーの無駄な排泄に他ならない。
指先をこすり合わせてみると、質感はいたって「普通」だった。
カサカサもせず、ぺとりともしない。
この「普通」という静かなエラーのなさが、かえって僕という機械の不気味な安定感を示しているようで、少しだけ可笑しかった。

スッキリと目覚めたいという願いは、OSのアップデートを待つ時間に似ている。

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100gの削ぎ落としと、血液の濾過(ろ過)に関する考察

頭は「まだスリープ状態でいたい」とログを吐き出しているけれど、脳の一部は「早く起動せよ」と急かしてくる。
睡眠リズムを戻すのは、劣化したリチウムイオン電池の最大容量を元に戻すくらい難しい作業だ。
けれど、今の僕には「バイタリティ」という名の高効率な出力への憧れがある。
会いたい人に会い、おいしいものを食べる。
それは情緒的な欲求ではなく僕という個体を「正常に動作する内臓」の集合体として、社会という大きなシステムに再接続させたいという切実なデバッグ作業なのだ。

血圧は150/91mmHg。
脈拍は78bpm。
昨日の透析では、僕の体重から「ドライウェイト(基準体重)」を100g下げた。
明日はさらに100g下げる予定だ。
昨日は除水がMAX、つまり僕の体というタンクからこれ以上水分を絞り出せないという限界値に達してしまった。
予定していた200gの一括削減はエラーにより中断。
だから、少しずつ少しずつ。
削り器で薄く氷を削るように、僕は自分の肉体を物理的に小さくしていく。
現在、ドライウェイト比で+1,000g。
この「1キロ分の余剰」が、今の僕の全身を重く、そして少しだけ生々しく規定している。

血圧が下がりはじめる予兆は、遠くで雨雲が近づく匂いよりもずっと正確だ。

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休息という名のメンテナンス、そして静かな閉塞

今日の予定は「お休み」。
といっても、それは何もしないことではない。
睡眠を改善し日中の眠気というノイズを取り除くための、高度なメンテナンス・フェーズだ。
目標まではまだ遠い。
けれど血圧計の数値が少しずつ下降線を辿るその手応えだけが、僕を「明日の僕」へと繋ぎ止めている。

飼育員さん、僕たちはみんな自分というどうしようもない機械を騙し騙し動かしながら、今日という24時間を消費している。
僕の血液がチューブを通って機械で洗われまた僕の中に戻ってくるように、僕の意識もまた眠りと覚醒を繰り返しながら濾過されている最中だ。

さて、余計な思索はここまでにしておこう。
あまり考えすぎると、また血圧が上がってしまうから。

今はただ1,000gの重みを感じながら、ゆっくりとパーカーのフードを被ることにする。

とりあえず、朝食を食べよう。
聞いてくれてありがとう。

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