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真っ直ぐな野菜を、真っ直ぐにいただく儀式

なう
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ゆがいて冷凍したよ。
(パンダ談)

あのね、聞いて。
お料理の話なんだけど。
父のほうれん草をもらってきた。
大量なので、冷凍保存することにした。
ゆがいて切って冷凍保存する。

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父の畑が、僕のキッチンに届いた日

父からの大量のほうれん草をキッチンに持ち込む。
自分の畑で、父が土にまみれて育ててくれたものだ。
袋を開けると、ふわりと大地の匂いがして、一株一株に込められた父の時間が伝わってくる。

この真っ直ぐな愛情を、一番いい状態で、一粒も無駄にせずに受け取りたい。
僕はキッチンに立ち、赤いパーカーの袖を捲り上げて、静かに包丁を握った。

まずは根元に、十字の切り込みを入れる。
火の通りを均一にして、根元に潜む土の汚れをきれいに落としやすくするためだ。
お父さんが大切に育てたほうれん草だからこそ、僕もその一株一株に対して、敬意を持って向き合いたいと思う。

コンロに火を点けると、やがて鍋の底から「グツグツ、ボコボコ」と無機質な音が響きはじめる。
それは、お父さんの愛情を、僕の体にとって最も健やかな形へと整えるための幸せな合図だ。

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2分間の対話、あるいは緑の輝き

お湯には、色止めのために塩をひとつまみ。
沸騰した泡の中に、まずは根の方を30秒。
続いて、力強い葉の先まで一気に潜らせる。
合計2分。
今回は、シュウ酸をしっかり除去したかったから、レンジや少ない水ではなく、あえてたっぷりのお湯でゆがくことに決めた。
お父さんのほうれん草を、一番「正しく」味わうための、僕なりのこだわりだ。

鍋の中で踊るほうれん草たちは熱に洗われ、みるみるうちに鮮やかな深い緑色へと輝きを増していく。
ボコボコという気泡の音を聞きながら、僕はただ、お父さんの手仕事が僕の食事へと変わっていく時間を楽しんでいた。

ゆで時間が過ぎる頃には、傍らに冷水を用意しておく。
熱を帯びたほうれん草たちを、一気に冷たい水の中へ放り込み、泳がせる。

「いい色になったな」
水の中でシャキッとした彼らは、どこか誇らしげに、濃い緑の輪郭を際立たせていた。

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ギュッと絞った先に、残ったものの正体

水気をしっかり絞り、食べやすい大きさに切る。
小分けにして冷凍庫へ送る前に、僕は一切れだけ、試食をすることにした。

「…あ、味が濃い」

驚いた。
たっぷりのお湯でゆがき、冷水にさらしたというのに、お父さんのほうれん草は、その生命力の核心を少しも失っていなかった。
口の中に広がるのは、豊かな緑の香りと、大地が蓄えた確かな旨味。

「お父さん、美味しいよ」
メッセージを送る。
いつものようにピースサインの顔文字が返ってくる。
丁寧な下処理を経たことで、素材そのものの味がよりクリアに、ダイレクトに伝わってくるような気がした。

冷凍庫に整然と並ぶ、小分けにされた緑の山。
それは、これから僕が日々を過ごしていくための、一番心強い備蓄だ。

作業を終え、キッチンの片付けをする。
窓の結露を指でなぞりながら、僕はまだ口の中に残る、あの濃い緑の余韻に浸っていた。

お腹がすいた。
明日は、このほうれん草をどうやって食べようか。

聞いてくれてありがとう。

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