かつて王子を熱狂させた魔導器「Switch」。
王子の愛機として幾多の戦場を駆け抜けたその平たい躯体(くたい)に、ある日、人知を超えた「変異」が訪れた。
竹林の静寂を切り裂く、王子の歓喜の叫び。
それは破滅へのカウントダウンか、あるいは新たなる命の胎動か。
今、王国の財政を揺るがす「聖なる懐妊事件」の幕が上がる――。
膨らむ野心と、はち切れそうな愛機(デバイス)

王子は、震える手でその魔導器を掲げた。
かつては薄く、洗練されていたその腹部が、今は見る影もなく丸々と膨らみ、側面の装甲には痛々しい隙間が空いている。

執事! 大臣! 早く来ておくれ!
ついに…ついにやったよ!
駆けつけた執事は、その膨張したバッテリーを一目見るなり、顔を蒼白に染めた。

お、王子…!
すぐにそれを手放してください!
それはリチウムイオン電池が寿命を迎え、ガスが発生しているのです!
いわば、いつ火を噴いてもおかしくない『時限爆弾』ですよ!
しかし、王子の瞳は、かつてないほどにキラキラと輝いていた。

何を言っているんだい、執事。
聞き捨てならないな。
僕サマの耳にははっきりと『離乳食(リニュウショク)の準備をしろ』と聞こえたよ。
そうだろう?

…はい?
執事が眼鏡をズラした隙に、王子は自信満々に「聖典(という名の絵本)」を広げた。

見てごらん、この絵本を!
『お腹が大きく膨らんだら、中から可愛い赤ちゃんが産まれる』と書いてある!
ついに僕サマの愛が強すぎて、Switchに命が宿ったんだ。
隙間から見えるこの銀色の袋…これが、新しいJoy-Conの『卵』に違いないよ!
大臣は感動のあまり、竹林の地面に平伏した。

おおお…!
なんという奇跡!
機械ですら王子の徳に当てられ、子を成すとは!
これぞワガママ王国の『少子化対策』の決定打ですな!

大臣、乗っからないでください!
王子、それは赤ちゃんの卵ではなく、爆発寸前のガス袋です!
センサーが、僕の危機管理センサーが『ピッピッピッ!』と耳裏で鳴り止まないんですよ!
救国のお布施:王位継承(買い換え)への道
王子は執事の警告を「産みの苦しみに対する過剰な心配」として一蹴したが、1つだけ現実的な問題に直面した。

でも執事、赤ちゃんが産まれるには『病院(任天堂サポート)』に行くか、あるいは新しい『ゆりかご(Switch 2)』を用意してあげなきゃいけないんだよね?

…ええ、まあ、物理的に新調するか修理するかしないと、この国からゲームの音が消えますからね。

困ったな。
今、王国の金庫には竹の皮と花粉しか入っていないじゃないか。
そこで王子は、高らかに宣言した。
国民の愛を、今こそ「形」にする時だと。

そうだ!
国民のみんなに『出産祝い』を募ろう!
王国の交易所(BASE)に、僕サマが魂を込めて選んだ品々を並べてあるんだ。
それを手に入れてくれれば、そのお代が『赤ちゃんの出産費用』になる…。
みんな、僕サマをパパにしておくれ!
執事は天を仰いだ。

…正確には『修理代および買い換え費用』ですが、もういいでしょう。
皆様、どうか王子の愛機が爆発して竹林が火の海になる前に、ご協力をお願い申し上げます…。
王子は、膨らんだSwitchにそっと耳を当て、満足そうに微笑んだ。

よしよし、いい子だ。
産まれたら一緒に『スイカゲーム』をしようね。
…ねえ執事、赤ちゃんSwitchには、やっぱり充電器じゃなくてミルクを挿したほうがいいのかな?

絶対にやめてください。
感電します。



