静寂に包まれた竹林。
風が笹の葉を揺らし、カサカサと乾いた音を立てる。
それは、文明の喧騒から切り離された聖域の調べ。
しかし、その静寂の裏側で、目に見えぬ「徳」が積まれ続けていることを、王子はまだ知らない。
1人の旅人が訪れ、また1人の旅人が去る。
広大な「ネットの海」という荒野において、この小さな竹林の王国に光が当たり続けるのは、決して偶然ではないのだ。
名もなき民が、見えぬ場所で流す汗。
その結晶が、今、王子の瞳に「数字」となって映し出される。

ああ! 大臣! 大変だよ!
見て、この『にほんぶろぐ村』という場所を!

ははっ!
いかがなさいました、王子。
そこは旅人たちが集う、いわば情報の宿場町にございますが…

ここにある『ランキング』という項目…これ、『ランニング』の間違いだよね!?
僕サマ、気づいちゃったよ。
誰かが毎日、僕サマの代わりにこの村を全力疾走(ランニング)してくれているんだ!

…は?
ランニング…でございますか?

そうだよ!
じゃないと、こんなに順位が上がるはずないじゃないか!
ほら、今日もまた順位が上がってる。
これはきっと、見知らぬ誰かが、僕サマのために朝から晩までハァハァ言いながら、村の広場を激走してくれている証拠だよ。
まさに『不眠不休(ふみんふきゅう)』の努力だね!

(それは単なるクリック投票の結果であって、物理的な走行距離ではないのですが……)
おお…!
左様でございますか!
毎日、どこの誰ともわからぬ御方が、王子のために土を蹴り、汗を流して順位を押し上げてくださっていると!

うん!
そのおかげで、飛行機に乗ってやってくる旅人たちも『おっ、あそこで誰かがめちゃくちゃ走ってるぞ?
ちょっと寄ってみようかな』って、この王国を見つけてくれるんだ。
その人の足腰、もうボロボロなんじゃないかな…。
心配だよ。

(眼鏡をクイッ)
…王子。
それは『投票(とうひょう)』という応援の形であり、実際に走っているわけではありません。
ですが、毎日欠かさずボタンを押すという行為は、精神的にはフルマラソンにも匹敵する『忠誠の証』と言えるかもしれませんね。

執事、相変わらず理屈っぽいなあ!
でも、とにかくその『名もなきランナー』のおかげで、今日も王国は賑わっているんだ。
本当にありがたいよね。
僕サマ、感動しちゃった!

よし決めた!
毎日走ってくれている『誰かさん』のために、僕サマ、特製のプロテインを竹林の入り口に置いておくことにするよ! ドヤッ!


